共生と分有のトポス 共生と分有のトポス

よそを聞くためにここで見ることを学ぶ。
あの事を再考しながら。

映画「ヒア&ゼア」監督ジャン・リュク・ゴダール

プログラム概要

本事業は受講生と共にどのように代替的な公共的手段を見つけることができるかという疑問から出発し社会領域と共に芸術と教育それ自体にも対峙しつつ進められます。

令和5年の10月に京都市立芸術大学は京都駅東部の崇仁地域へ全面移転します。被差別の歴史を有するこの地域への大学移転は、行政、大学、地域住民の間での長期にわたる折衝を経て実現したものであり、芸術が有する独自性を深化させつつ、まちづくり構想にも開かれた役割をも担わされています。本事業では、地域・大学・芸術の関係について積み重ねられてきた調停から現れる「共通の属性」と「相容れない属性」、この複雑な関係について思考を重ね、以下の3つの活動を軸に進めていきます。

テーマ 1 環境:聞くこと〜暮らしの生態系
フィールドワークやモノを介した対話をモデルとして「暮らしの生態系」から聞く技術。
テーマ 2 ケア:物語ること〜アルバムに貼られていないスナップショット
言葉・イメージ・身体を介して経験を再構築し伝える技術。
テーマ 3 公共空間:Still Moving 〜崇仁でゴドーを待ちながら
テーマ1と2でのリサーチを基盤に、取り壊された住宅の痕跡が残る空き地に仮説的な舞台設営を試みます。ここでの準備設営展示公演解体移動記録というプロセス自体が古い課題を新しい視点から見るための地域との協働的な集団制作行為となるでしょう。

受講のかたち

設定したテーマに沿った身体行為、発話行為、屋外設営、音響、映像など実験的な制作を少人数のグループで経験していきます。個々の活動が相互に連環する演出を計画していますが、受講生とは継続的な参加方法よりは、むしろ、一回一回解散してリスタートする仮説的な協働性のあり方を探っていきます。

講師

⼤⻄⿇貴
建築家/横浜国⽴⼤学教授

1983年愛知県生まれ。百田有希と共に一級建築士事務所大西麻貴+百田有希/o+h主宰。住宅、インスタレーションから公共建築まで、幅広い規模の建築プロジェクトを手掛ける。設計プロセスにおいては、対話を重視し、建物を作ることを通してまちづくり全体を考える姿勢で取り組む。JIA新人賞、建築設計学会大賞など多数受賞。

奥⼭理⼦
Social Work / Art Conference ディレクター/みずのき美術館キュレーター

母の障害者支援施設みずのき施設長就任に伴い、12 歳より休日をみずのきで過ごす。施設でのボランティア活動を経て、2012 年みずのき美術館の立ち上げに携わり、以降企画運営を担う。アーツカウンシル東京「TURN」コーディネーター(2015-2018)、東京藝術大学特任研究員(2018)を経て、2019 年より、HAPS の「文化芸術による共生社会実現に向けた基盤づくり事業」に参画、相談事業Social Work / Art Conference の立ち上げを行う。

倉智敬子
美術家

平面・オブジェ・インスタレーションを駆使しナラティブな場の可能性を探求する。主な展覧会に、「PARASOPHIA:京都国際現代芸術祭」(京都、2015) 、「Chatter Box:ヒトの鳴き声」(MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY、京都、2012)、「NOWHERE/Vale of Paradise」(サンチアゴ・チリ、2006)、「Devices of Memory」(The Urban Institute for Contemporary Arts、アメリカ、2006)、「L to R: Dictionary/Constellation to Mother Tongue」(Museum of Art, Munson Williams Proctor Institute、アメリカ、1999)、「Mother Tongue」(Hewlett Gallery at CarnegieーMellon University、アメリカ、1998)など。 京都市立芸術大学大学院美術修士課程修了、コロンビア大学大学院美術修士課程修了。

清水チナツ
インディペンデント・キュレーター/PUMPQUAKES

1983年福岡県生まれ、宮城県在住。2011-2018年までせんだいメディアテーク学芸員。2019年にコレクティブ「PUMPQUAKES」を設立。2020年に文化庁新進芸術家海外研修制度研修員としてメキシコ・オアハカに滞在。主な企画展に「畠山直哉 まっぷたつの風景」(せんだいメディアテーク、2016)、企画・編書に民話採訪者・小野和子『あいたくて ききたくて 旅にでる』(PUMPQUAKES、2019)、参加展に「ラテンアメリカの民衆芸術」(国立民族学博物館、2023)など。

髙橋悟
美術家/本プログラムディレクター/京都市立芸術大学教授

「生存の技法」という視点からアートを捉え直し、領域横断的な制作や研究プロジェクトを国内外の機関で展開してきた。主な展覧会に「PARASOPHIA京都国際現代芸術祭2015」(京都市美術館)「生存のエシックス」(京都国立近代美術館)、「横浜トリエンナーレ2014」(横浜美術館)など。

⽥中功起
アーティスト

アーティスト、京都在住。主な展覧会、映画祭に、パレ・ド・トーキョー(2020年)、ベルリン国際映画祭(2020年)、あいちトリエンナーレ(2019年)、ロッテルダム国際映画祭(2019年)、ミグロ現代美術館(2018年)、ミュンスター彫刻プロジェクト(2017年)など。2013年のヴェネチア・ビエンナーレでは、参加した日本館が特別表彰される。2015年にはドイツ銀行によるアーティスト・オブ・ザ・イヤーを授賞。主な著作に『リフレクティブ・ノート(選集)』(アートソンジェ、美術出版社、2020年/2021年)など。ヴィデオや写真、サイト・スペシフィック・インスタレーション、あるいは介入的なプロジェクトなどの多様な芸術実践のなかで、田中はシンプルな日常的行為のなかに潜む複数のコンテクストを明示しようとする。オブジェクト指向の初期作品では、ありふれた日用品による実験を行い、日常のルーティーンから逃れる可能性を提示する方法を模索していた。のちの作品では、参加者たちに非日常的なタスクを集団的にこなすことを求め、そのありえない状況に直面している人々が無意識に示す振る舞いを記録する。それは、小さな社会や一時的な共同体のなかに生じる、集団の力学を明らかにしようとする試みである。

徳山拓一
森美術館アソシエイト・キュレーター

1980年静岡県生まれ。京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAを経て、2016年4月より森美術館アソシエイト・キュレーター。京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAでは、グイド・ヴァン・デル・ウェルヴェ個展「無為の境地」、奥村雄樹個展「な」(2016年)、アピチャッポン・ウィーラセータクン個展「PHOTOPHOBIA」(2014年)がある。森美術館では「SUNSHOWER: 東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで」(2017年)、「MAMプロジェクト025:アピチャッポン・ウィーラセタクン+久門剛史」(2018年)、「六本木クロッシング2019:つないでみる」(2019年)、「地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング」(2022年)などを担当。

長崎由幹
映像技術者/PUMPQUAKES

1985年宮城県生まれ、同地在住。映像技術を独学で習得した後、せんだいメディアテークで東日本大震災のアーカイブに従事し、その技術を実践的に展開する。2019年にコレクティブ「PUMPQUAKES」を設立。2020年から2021年にかけてメキシコ・オアハカにて版画運動のドキュメントに取り組み、「ラテンアメリカの民衆芸術」展(国立民族学博物館、2023)の〈記憶と抵抗〉パートに映像を出展。現在は、農や食を通じて育まれてきた感性についてのリサーチに取り組んでいる。

松井広志
メディア論/愛知淑徳⼤学准教授

1983年、大阪府生まれ。大阪市立大学大学院文学研究科単位取得退学、博士(文学)。愛知淑徳大学創造表現学部准教授。専門は文化社会学、メディア論。模型やゲームの歴史に基づき、「モノがどのようにメディアとなるのか」という問いを探究している。主な著書に『模型のメディア論』(青弓社、2017)、編著に『多元化するゲーム文化と社会』(ニューゲームズオーダー、2019)、『ソーシャルメディア・スタディーズ』(北樹出版、2021)などがある。

⼭内朋樹
美学/京都教育⼤学准教授/庭師

京都教育大学教育学部美術領域准教授。在学中に庭師のアルバイトをはじめ研究の傍ら独立。庭の構造を物体の配置や作庭プロセスの分析から明らかにするフィールドワークをおこなっている。現在、京都福地山観音寺の作庭現場に取材した「庭のかたちが生まれるとき」をフィルムアート社ウェブサイトで連載中。共著に『ライティングの哲学』(星海社、2021年)、訳書にジル・クレマン『動いている庭』(みすず書房、2015年)。

山田毅
美術家/蒐集家/京都市立芸術大学、京都芸術大学、京都精華大学非常勤講師

映像表現から始まり、舞台やインスタレーションといった空間表現に移行し、ナラテイブ(物語)を空間言語化する方法を模索、脚本演出舞台制作などを通して研究・制作を行う。2015年より京都市東山区にてフリーペーパーの専門店「只本屋」を立ち上げ、京都市の伏見エリアや島根県浜田市などで活動を広げる。2017年に矢津吉隆とともに副産物産店のプロジェクトを開始。2019年春より京都市内の市営住宅にて「市営住宅第32棟美術室」を開設。現在、作品制作の傍ら様々な場作りに関わる。

⼭本⿇紀⼦
アーティスト/京都市立芸術大学⾮常勤講師

ある特定の場所についての観察や考察を続け、常識や習慣など日常の中で見過ごされている事柄や疑問を糸口にして、他者とのコミュニケーションを発生させるプロジェクトを行う。その一連の過程を、絵、写真、映像、染め、刺繍など様々な形式で作品制作を行っている。2018 年~2020 年には総合福祉施設 東九条のぞみの園(京都市南区)との協働プロジェクト「ノガミッツプロジェクト」、2020 年~崇仁地域(京都市下京区)にて「崇仁すくすくセンター(挿し木プロジェクト)」をスタートさせ、主に高齢者との関わりを起点にし、様々な人たちとの関係をつくり出しながらプロジェクトを展開している。

諸注意

◯ プログラムの日時や講師、会場等は変更となる場合があります。

◯ 台風などの天候や新型コロナウイルス感染防止のために開催を中止することがあります。

◯ オンラインレクチャーの画面録画、イベントのカメラ・ビデオ等による記録撮影が行われ、ウェブサイトや報告書、広報物等で使用させていただく場合がございます。予めご了承ください。

お問合せ先

Eメール : art-f@kcua.ac.jp

電話 : 075-334-2006
(教務学生課/受付時間:平日9:00–17:00)