Close

10/24- 展覧会「聞こえないを聴く・見えないを視る」開催

「霧の街」とは人口減少、災害、紛争などでコミュニティの環境や生活の遺産が消えつつある状況を指します。「聞こえないを聴く・見えないを視る」では失われていく記憶の背景へと私たちの想像力を開く試みとして、言葉や映像では捉えきれない地域の感覚記憶を未来へと伝える方法を探求しています。本年度は京都駅にほど近い崇仁地域周辺の風景を音として記憶化する方法をサウンドアーティストの鈴木昭男氏と共に探りました。鈴木氏は自然や都市の風景に耳をすます「点音」を1996年にベルリンで発表して以来、世界各地で行っています。今回のプロジェクトでは、建設工事に伴い急速に変化していく崇仁地域周辺の特徴を示す「ポイント」を探りだし、《点音 in 崇仁(京都)》という地図を制作しました。この地図は、今という時間のフレームを超え、未来や過去へと私たちを回遊させてくれます。地図を楽譜と見立て、まるで演奏するように地図で示されたポイントを歩けば、地域に配置された「ポイント」同士の違いや意外なつながりを見出すことになるでしょう。
また崇仁地域を南北に流れる高瀬川に螺旋状の鉄線を設置した鈴木氏の作品《MAKE UP》は、川面のミクロな流れや音を装い、まわりの光景をもゆるやかに振動させていきます。このような試みは、地域の記憶を記念碑のように固定化するのではなく、生成と変化の流れとして捉え直し外部へと開く「感覚共同体アーカイブ」の提案へと繋がるでしょう。

プログラムディレクター 高橋悟(美術家/京都市立芸術大学美術学部教授)

展覧会概要はこちら→ https://liquid-kcua.jp/projects/exhibit19/