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CASE-1 霧の街のアーカイブについて

本年度は、京都駅にほど近い崇仁地域周辺の失われつつある環境について、サウンドアーティストの鈴木昭男氏と共にプロジェクトを行います。地域の特性を言葉や記録映像ではなく「音」で捉える《SUJIN点音MAP》は「感覚によるコミュニティアーカイブ」という新たな方法で記憶を伝えることになるでしょう。
また、次年度のプロジェクトを視野に入れたリサーチプログラムとして、「霧の彫刻家」中谷芙二子氏を中心としたチームと共に地域の気象条件や環境についての調査を行います。移民を排除する催涙ガスでも、工場から排出される公害物質でもなく、蒸気となった水が露点に達し粒子となり生じる霧という自然から地域の環境や記憶に対面する方法を探ります。
これら二つの活動は、地域の記憶を記念碑のように固定化するのではなく、環境の変化と共に変容していく「動的な記憶や感性の記録」の提案へと繋がるでしょう。
本企画ではプロジェクトと並行して、オープンレクチャー・セミナー・ワークショップを行い、芸術実践に関わる知識と経験を深化させていきます。

プログラムディレクター 京都市立芸術大学美術学部教授 高橋悟