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「キコエナイヲキク・ミエナイヲミル」––環境を捉える技術としてのワークショップ③

講師:杉山雅之(美術家)
日時:11月16日(土)18:00-20:00
場所:元崇仁小学校

ワークショップ「他視点、あるいは多視点は可能か。」

今年、芸大の大学院を卒業した学生が1年生の時に制作した作品の一つに、「阿修羅像」の見ている世界はどういう風景か」というテーマの作品がありました。この見えている世界というのは、いわゆる仏教的な教えの世界というものではなく、三つの顔を持ち、3セット、6個の目が見ている視覚が結ぶ像の世界でした。できた作品からは、その世界がどういうものかとはわかりませんでしたが、その発想に驚いた記憶があります。実際に6つの目を持つことは不可能でしょうが、ちょっと考えてみることは可能です。人類が月に行ってから半世紀、月は身近なものとなったことになっています。しかし、今、人々が月に関して思いを巡らすことなどなくなったのではないでしょうか。事業に成功してお金持ちになった人が次の欲望として月旅行の予約をすることぐらいでしょうか。人類初の月面着陸、アポロ計画はわたしたちから月に対して想像することを奪ってしまった。しかし、どうでしょう、月面に立って月から地球を見たらどんな風に見えるのか。地学の先生に聞いてみる前に、ちょっと考えてみませんか。太陽の周りを回っている地球からは、太陽が動いて見えるのと同じように、地球の周りを回っている月から地球を見たら、地球が動いているようにみえるのではないか。ことはそんな単純なものではないでしょうが、ちょっと考えてみることは可能です。大金持ちでない人でも可能です。

自分ではない視点からものを考えよう、とはよく言われることですが、実際なかなか簡単なことではないと思います。晩秋のひととき、皆さんといっしょに、お話ができたらと思います。

杉山雅之